『人間道楽』 7-15. 171210

7-15. 嵐の中の空港

前回のお話の続きです。

嵐の中、乗った機体が緩やかに動き出し
滑走路の先端まで移動していきます。

機内アナウンスで
「天候の回復を待ち、離陸いたしますので
もう暫くお待ちください。」
機長の落ち着いた声が、乗客の不安を軽減します。

離陸までの滑走路で待機した時間が20分。
「上手くできてるな。結局37便の出発時刻だ。」
なんとなく、そんな事を思っていた。

機体は鈍く揺れたかと思うと、
加速をはじめ みるみる背中に
Gが加わっていくのを感じる。

車輪からの激しい振動が、
大きな翼が風を捉えた瞬間に、
主翼を持ち上げる揚力に切り替わったのを身体が感じた。

フワッとした頼りない感覚が全身を包みこんだかと
思うと機体は、機首を雨雲へ向けて
急な角度でどんどん駆け上がっていく。

まだ、飛行機が発明されていない頃は
空は、鳥や昆虫など。
ごく限られた生き物たちだけのモノでした。

今現在、航空力学に支えられ
揚力や、推進力の技術も進み
人間は、当たり前の様に大空を飛べるようになった。

その土台は自然の摂理が支えています。

物理学などの研究がそれを解明して、
技術が現実に飛べる機体を作り出し。
経済が万人が飛ぶことの出来る環境を作り出した。

そして最後は、現場の方々の判断。
こんな天候の中で、飛ぶことにどんなリスクがあるのか?

機体の強度や、性能。
リスクを上回るマージン。
理論立てられた現実の数字と経験値。

どれをとっても、不安を払拭するのに十分だった。
素人の僕が、口を挟む隙間もない。

急上昇中の機体の振動は激しい。
飛行機が、頑張ってるのが伝わってくる。
嵐を引き裂いて上昇を続ける飛行機。

窓からの鈍い光の中で、
時おり稲光がフラッシュする。
それが、雨雲に入り光を遮断したと思った
次の瞬間、眩いばかりの
神々しい光が窓から差し込んできました。

雨雲を抜けたんだ。

機体の振動も無くなり
エンジン音だけが機内にコダマしています。

水平に保たれた機内が
安堵の感情に満たされます。

僕は、強張っていた身体を解きほぐすかのように
その日の、わずか半日の出来事を
思い返していました。

この半日ほどの間に起った出来事には
多くの学びが隠されている事に
氣がつきます。